2014年3月25日火曜日

第2回 「上位小売業の変化」

今回は、第1回目の「チャネル構造の変化」に続き、日本の上位小売業がどのように変化しているかについて見ていきます。1995年の小売業売上上位25社と2011年の小売業売上上位25社を比較してみました。

図表1:1995年度の小売業売上上位25社



図表2:2011年度の小売業売上上位25社



1995年と2011年の間での日本の小売業の売上上位25社を概観すると、改めて、その変化には驚かされます。読み取れる変化のポイントについて、4つの視点で整理することが出来ます。

1.上位小売業への寡占化が進行している。

上記の上位小売業25社を合計した金額を集計してみると、1995年度の15兆6901億円に対し、2011年度は25兆8828億円と1.65倍になっています。この間、全体市場の大幅な伸張は見られない事から、この期間で、急速に上位小売業への寡占化が進んでいる事が分かります。

 2.企業間の合併・連衡の活発化

1995年以降、特に、1997年の消費増税以降、経営破たんする企業を吸収する形での、また競争力を高める為の大手企業同士の企業間の合併・連衡が進んでいます。1995年当時の上位企業で、そのままの経営形態・母体で2011年も存続している小売業は数少ない事が分かります。

3.GMSや百貨店が苦戦する一方で専門型業態が躍進している。

1995年当時の上位小売業は、GMSと百貨店で占められていましたが、2011年では家電や衣料等の専門店やドラッグストア、ホームセンター等の業態が大幅に伸張した事が分かります。一言で申し上げると、この間、GMSや百貨店の従来型の業態が苦戦する中、専門型業態が大きく躍進していることが分かります。

4.SPA(製造小売業)、価格競争力を売りにする企業の躍進

ファーストリテイリング、しまむら等のいわゆるSPA(製造小売業)業態、プライベートブランドを保有し、価格競争力を売りにする企業の躍進を見てとる事が出来ます。


以上、1995年と2011年の変化を4つの視点で整理してみました。これらのキーワードから導かれるメーカーが求められる対応とは何でしょうか?

小売業の上位寡占化に伴い、大型化・専門化した小売業のマーケティングは格段に高度化・専門化しています。今や、日々の店舗での販売動向がタイムリーに反映されるPOSデータで売れ行きをすぐに把握出来るのは当たり前で、会員カードを保有する小売業では顧客情報を活用したチラシ以外の販促が活発になってきています。今や、チラシは、ネット上でも配信され、スマートフォンでもお客様が閲覧出来、且つ、便利なアプリで、お得な情報をお客様にお届けする事は日常化しています。



こうした変化に対して、メーカー営業が求められる対応も高度化・専門化しているといえます。一言で言うと、ブランド・商品の選択と店舗の選択の主権をもつ消費者(お客様)に対して、ブランド力・商品力を持つメーカーと集客力を持つ小売業が、お客様に対して協働で、マーケティングを実践していく為に、必要なスキルと専門性、ひいては、メーカーとしての企業力・総合力が求められていると言えます。

もはや、メーカー営業は、「自社商品を得意先に売り込む」ためには、参入カテゴリーを中心とする消費者やカテゴリー理解をベースにし、あるべき品揃えや棚割、お客様への効果的なプロモーション施策等の小売業のカテゴリーを中心とするマーケティングプランの立案・提案・実行・検証という役割を担う必要が出てきていると見ることが出来ます。



「チャネル構造の変化」、「日本の上位小売業の変化」と2回に渡り、チャネルや小売業の変化について概観してきました。次回は、「消費者の変化」について、見ていきたいと思います。

2014年3月10日月曜日

第1回 「チャネル構造の変化」


1回目のテーマは、「チャネル構造の変化」です。

まず、実態把握を進める上で、各業界団体から発表されている、2012年のチャネル別の市場規模と対08年比の動向をを整理してみました。




図表1:チャネル年間市場規模(2012年) 単位:億円



図表2:チャネル別12年度市場規模対08年比


出典:
・ドラッグストア:日本チェーンドラッグストア協会(JACDS
2012年度日本のドラッグストア実態調査2012年度日本のドラッグストア実態調査データより
・ホームセンター:日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会公表データより
・コンビニエンスストア:日本フランチャイズチェーン協会公表データより
・通信販売:公益社団法人日本通信販売協会公表データより
・スーパー:日本チェーンストア協会公表データより
・百貨店:日本百貨店協会公表データより



ご存じのように日本の総人口は減少傾向、パイが増えない中、6業態の合計は、約43兆円
12年市場規模の08年対比は102.9%と微増となっています。

しかしながら、チャネル毎には、①通信販売 ②CVS ③Dgs のチャネルが大きく伸張する一方で、百貨店、SMは減少している事が分かります。


食品を中心にチャネル間競争の現状を見てみると、例えば、2013年において、CVSの主力チェーンの新規出店は、1500店舗を超える勢いです。昨今のCVSは、震災以来、日配(食品・牛乳・乳製品等)等の伸びが顕著で、ミニスーパー化しています。また、Dgsにおいても、食品部門の売上構成比が50%に迫るチェーンも増加しており、こぞって、食品部門の強化を図っています。食品を中心とした市場においては、SMの持っていたパイが、CVSDgs等に奪われているとみる事が出来ます。

また、昨今の通信販売は、従来の書籍やCD/DVDといった分野だけでなく、家電量販や  食品等にも取扱いの範囲を広げているのはご存じの通りです。例えば、身近な商品でも、ペット用品等に関しては、かつては、HCが主力チャネルでしたが、昨今では通信販売でのペット用品の伸張も顕著で、HCの構成比が減少傾向で、通信販売が大きく伸張するという
構造が色濃くなってきています。

こうしたチャネル構造の変化を考える上でのキーワードは、「商品を購入される消費者(生活者)に、どのチャネルで購入するのが便利かというチャネル選択の主導権が移っている」
という事に他なりません。必然的に、消費者(生活者)に対して、メーカーとして、
「どのチャネルでも買える」状況を作り出す事がより重要になっています。

しかし、こうした変化するチャネル構造に対しての対応は、従来、「どのチャネルでも売れてほしい」というマス型商品の対応では立ちいかなくなっているのが実情ではないでしょうか?

マーケティング的な視点で見ると、4Pの中のPLACEに関係する、「チャネル戦略」や
チャネル内での伸びているチェーンとの取組は、メーカーのマーケティングを考える上で、非常に重要な要素になってきていると言えます。また、「チャネル専用」等の、PRODUCT
にまで踏み込む必要性が高くなってきているとも言えます。

・御社のブランドは、伸びているチャネルで順調に実績を伸ばせていますか?

・御社のブランドは、チャネル内での伸びているチェーンで順調に実績を
伸ばせていますか?

・また、こうしたチャネル戦略やキーアカウント(重点小売業)との取組内容は十分に
 検討され、課題を解決出来ていますか?

という課題に対しての対応力が、メーカーのマーケティング戦略の成否、ひいては、収益に直結する時代になっていると言えそうです。
次回は、「チャネル構造の変化」に続き、「日本の上位小売業の変化」について、見ていきたいと思います。