2014年4月28日月曜日

第4回 「消費者のメディア接触の変化」

今回は、まず、日本の広告費に見る直近のトレンドをご紹介しながら、ここ数年の広告から見た消費者に対するコミュニケーションの変化について見ていきたいと思います。

株式会社電通の「2013年の日本の広告費」のデータを元に、2005年から2013年の広告費の変化がどうなっているかを見ていきます。


図表1:日本の広告費 (単位:億円)



















※出典:株式会社電通の「2013年の日本の広告費」  


図表2:媒体別広告費 (単位:億円)



※出典:株式会社電通の「2013年の日本の広告費」  




日本の総広告費は、2005年以降では、2007年の7兆191億円をピークに、2008年以降、広告費総額としては下降傾向で推移していましたが、2013年は5兆9,762億円、前年比101.4%と2年連続増加となっています。

媒体別に見ていくと、広告費ではテレビが1位、次いで、2009年を境に2位はインターネット広告、次いで新聞、雑誌、ラジオの順となっています。

また、各媒体の伸張率を広告費が最大だった2007年対比でみると、テレビ=90%、インターネット広告=156%、新聞=65%、雑誌=55%、ラジオ=74%となっており、インターネット広告費の伸張が特に著しい事が見て取れます。


ご存じのようにこうした広告費の変化の背景としては、消費者のメディア媒体への接触の変化が背景にあります。

株式会社博報堂DYメディアパートナーズの「メディア定点調査2013」によると、東京地区の調査結果ではありますが、1日のメディア接触時間の推移は下記の通りになっています。
消費者の1日のメディア接触時間は、ここ数年、350分(5.8時間)で推移していますが、2013年では、携帯電話(スマートフォン含む)からのインターネット接続時間が大幅に増加しており、全体のメディア接触時間の35%を占めるに至っています。




図表3:媒体別接触時間 (単位:分)


※出典:株式会社博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2013」  



更に、媒体別接触時間を、性×年代別にみてみると、

・テレビ:男性に比べ女性の接触時間が長く、年代が上がるごとに接触時間が長くなる

・新聞:特に60代以上の男女で接触時間が長くなる

・PCからのインターネット接続:10〜30代での接触時間が長くなる

・携帯電話からのインターネット接続:10代・20代の接触時間が長くなる


という傾向が顕著になっており、性×年代別にメディア接触時間は大きく異なっている事が分かります。

前回、消費者の世帯収入について触れた時にも言及しましたが、ブランドのターゲットとする性・年代により、大きくメディア接触の状況が異なり、メーカー側のコミュニケーション戦略も、「平均的、総花的な」ものから、「どの層のお客様がターゲットなのか」という点が重要になってくると言えます。



図表4:性×年代別媒体別接触時間 (単位:分)


※出典:株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2013」 


上記の通り、こうした消費者のメディア接触の変化を受けて、メーカーを中心とする媒体別広告費は変化していますが、投下した広告費を自社の収益に繋げていく為には、「消費者の店頭での購入」に結び付けていかなければ意味がありません。

これは以前から言われている事ですが、新製品においては、広告を見て新製品を購入したという方は新製品購入者の1割強しかおらず、店頭で購入する事を決めた非計画購買は5割弱を占めるといわれています。

例えば、テレビ広告において、消費者のメディア接触頻度は相対的に低下している事から考えると、従来以上に、店頭での定番以外での露出を拡大させる事、また、購入に繋げていく為の店頭での情報提供が重要になってきていると言え、昨今、「店頭の重要性」が叫ばれるようになって久しいのはご存じの通りです。


以上、簡単ではありますが、4回目は広告や消費者のメディア接触についてご紹介しました。


次回5回目は、メーカーの販促費に関連する話をしていく予定です。

2014年4月14日月曜日

第3回 「消費者の変化」

今回は1回目の「チャネル構造の変化」 「上位小売業の変化」に続き、家計消費の変化に見る消費者の変化について見ていきたいと思います。今回は、まず、総務庁統計局発表の家計調査年報のデータから、2000年から2013年で世帯の家計消費支出の変化がどうなっているかを見てみる事にします。

図表1:1世帯当たり年平均1か月間の支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)




図表2:1世帯当たり平均所得金額の年次推移(平成24年国民生活基礎調査)




●伸びない消費、伸びない世帯年収

●二極化の定着

まず、図表1を見ると、家計調査年報によれば、1世帯当たり年平均1か月間の支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)は、13年では319,170円で、ここ数年は少し右肩あがりではありますが、2000年と比較すると93.4%(金額ベースで月平均▲22,726円)と、消費支出全体は落ち込んでいる事が分かります。
次に、世帯消費が伸びない大きな要因ですが、図表2の1世帯あたり平均所得金額を見ると、2000年以降、世帯あたりの平均所得は大きく下がっている事が分かります。金額ベースでは、2000年比で、68.7万円のダウン(月平均▲57,250円)となっていますので、2000年比で世帯収支は悪化している事が分かります。

また、平均所得金額は548万2千円の、1世帯あたり平均所得金額の度数分布をみると、平均所得金額以下の世帯は62.3%と平均所得以下の世帯構成が高くなっています。

この事から、昨今、世帯所得の状況は、世帯所得の二極化と合わせ、世帯所得が平均以下の方が多い構造になっている事が分かります。余談にはなりますが、こうした現在の市場環境は、「平均的な世帯像」や「平均的な消費行動」がとらえづらく、「どの層のお客様がターゲットなのか」という点が重要になってくると言えそうです。

図表3:世帯数の所得金額階級別相対度数分布




●世帯収入が伸びない中、消費支出のやりくりが進んでいる

次に、世帯消費が伸びない中、品目別の消費支出金額はどのように推移しているのでしょうか?
ここでは、対2000年の2013年の消費支出金額の対2000年比と2013年の消費支出金額をグラフ化
してみました。


図表4:支出分類別1世帯当たり年平均1か月間の支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)




●2000年と比較して伸張しているもの

交通・通信(120.5%) / 光熱・水道(108.4%) / 保健医療(106.4%) / 教育(104.2%)

交通・通信は、特に、自動車関連(購入・維持等)や通信費(スマートフォン等の携帯電話)の伸張によるもの。光熱・水道は、近年の電気代の値上げの影響によるもので、どれも積極的な支出で伸張しているものは少なくなっています。

●2000年と比較して落ちているもの

食料費(93.9%) / その他の消費支出(76.2%) / 教養娯楽(91.3%)/ 住居(91.1%) / 家具・家事用品(92.2%) / 被服及び履物(79.8%)

落ち込みが見られるものの中で、特に顕著なのは、その他の消費支出と被服及び履物になります。
その他の消費支出の中では、こづかいや交際費が大きく落ち込んでいます。
また、被服及び履物は、全体的に消費支出は大きく下降と、2000年以降、「不要不急」な支出に関して絞っている様子が分かります。こうした市場環境下で、第2回に触れた、大きく伸張した小売業を重ねあわせると、ファーストリテイリング、しまむら等のいわゆるSPA(製造小売業)業態が、家具ではIKEA等が元気な理由もわかります。

また、家計支出の中で、支出額が最大の食費に関しても、対2000年比で6.1%ほど、ダウンしている中で、食品スーパーやGMS、ドラッグストアやCVSも含めた業態間競争がますます激化している状況下で、価格競争はますます激化していると言えます。


以上、簡単ではありますが、消費者の世帯収入、家計消費支出の動向を見てきました。今回は、紙面も尽きましたので、次回4回目は、広告費や販促費の推移について、触れていきたいと思います。