2014年4月14日月曜日

第3回 「消費者の変化」

今回は1回目の「チャネル構造の変化」 「上位小売業の変化」に続き、家計消費の変化に見る消費者の変化について見ていきたいと思います。今回は、まず、総務庁統計局発表の家計調査年報のデータから、2000年から2013年で世帯の家計消費支出の変化がどうなっているかを見てみる事にします。

図表1:1世帯当たり年平均1か月間の支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)




図表2:1世帯当たり平均所得金額の年次推移(平成24年国民生活基礎調査)




●伸びない消費、伸びない世帯年収

●二極化の定着

まず、図表1を見ると、家計調査年報によれば、1世帯当たり年平均1か月間の支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)は、13年では319,170円で、ここ数年は少し右肩あがりではありますが、2000年と比較すると93.4%(金額ベースで月平均▲22,726円)と、消費支出全体は落ち込んでいる事が分かります。
次に、世帯消費が伸びない大きな要因ですが、図表2の1世帯あたり平均所得金額を見ると、2000年以降、世帯あたりの平均所得は大きく下がっている事が分かります。金額ベースでは、2000年比で、68.7万円のダウン(月平均▲57,250円)となっていますので、2000年比で世帯収支は悪化している事が分かります。

また、平均所得金額は548万2千円の、1世帯あたり平均所得金額の度数分布をみると、平均所得金額以下の世帯は62.3%と平均所得以下の世帯構成が高くなっています。

この事から、昨今、世帯所得の状況は、世帯所得の二極化と合わせ、世帯所得が平均以下の方が多い構造になっている事が分かります。余談にはなりますが、こうした現在の市場環境は、「平均的な世帯像」や「平均的な消費行動」がとらえづらく、「どの層のお客様がターゲットなのか」という点が重要になってくると言えそうです。

図表3:世帯数の所得金額階級別相対度数分布




●世帯収入が伸びない中、消費支出のやりくりが進んでいる

次に、世帯消費が伸びない中、品目別の消費支出金額はどのように推移しているのでしょうか?
ここでは、対2000年の2013年の消費支出金額の対2000年比と2013年の消費支出金額をグラフ化
してみました。


図表4:支出分類別1世帯当たり年平均1か月間の支出(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)




●2000年と比較して伸張しているもの

交通・通信(120.5%) / 光熱・水道(108.4%) / 保健医療(106.4%) / 教育(104.2%)

交通・通信は、特に、自動車関連(購入・維持等)や通信費(スマートフォン等の携帯電話)の伸張によるもの。光熱・水道は、近年の電気代の値上げの影響によるもので、どれも積極的な支出で伸張しているものは少なくなっています。

●2000年と比較して落ちているもの

食料費(93.9%) / その他の消費支出(76.2%) / 教養娯楽(91.3%)/ 住居(91.1%) / 家具・家事用品(92.2%) / 被服及び履物(79.8%)

落ち込みが見られるものの中で、特に顕著なのは、その他の消費支出と被服及び履物になります。
その他の消費支出の中では、こづかいや交際費が大きく落ち込んでいます。
また、被服及び履物は、全体的に消費支出は大きく下降と、2000年以降、「不要不急」な支出に関して絞っている様子が分かります。こうした市場環境下で、第2回に触れた、大きく伸張した小売業を重ねあわせると、ファーストリテイリング、しまむら等のいわゆるSPA(製造小売業)業態が、家具ではIKEA等が元気な理由もわかります。

また、家計支出の中で、支出額が最大の食費に関しても、対2000年比で6.1%ほど、ダウンしている中で、食品スーパーやGMS、ドラッグストアやCVSも含めた業態間競争がますます激化している状況下で、価格競争はますます激化していると言えます。


以上、簡単ではありますが、消費者の世帯収入、家計消費支出の動向を見てきました。今回は、紙面も尽きましたので、次回4回目は、広告費や販促費の推移について、触れていきたいと思います。